東京とんかつ会議149回 特別編 「東京とんかつ会議平成30年総括 優秀三選」
今年も多くの店を訪れた。1/9の巣鴨「亀かわ」から12/12の八丁堀「とうや」までの20軒を、会議の俎上にあげてきた。
殿堂入りは、神楽坂「あげづき 」、巣鴨「亀かわ」、小石川「洋食フリッツ」、赤坂「まさむね」、浅草「とお山」、糀谷「ふる味」の6軒、今年新しく取り上げた店は、巣鴨「亀かわ」、東高円寺「とんき」、池袋「嬉嬉豚とんかつ 君に、揚げる」、赤坂「金沢かつぞう」、高田馬場「とん米」、西荻窪「とんかつ布袋」、新川「とんかつ天山」、神宮前「まるや」、池の上「とんかつ太志」、糀谷「ふる味」、目黒「こがね」、錦糸町「キッチン浜家」、新宿「にいむら」、八丁堀「とうや」の14軒となる。
それでは今年新しく行った店の中で、特に優秀な3軒をあげたい。まずは池の上「とんかつ太志」であろう。長く営業されていると思うが、まったく知らなかった。交通の便も決していいとはいえず、客もほぼ地元客だろう。
運ばれてきたその姿を見ただけで確信し、食べて納得した。優れた肉と揚げ方衣とのバランスがいい。惚れた。百数十軒も東京都のトンカツ屋を巡ってもなお、まったくノーマークだったこんないいトンカツ屋があることが、なによりも嬉しかった。
新しい店では、糀谷「ふる味」である。和食の職人から転じてとんかつを揚げてらっしゃるのだが、その真摯な姿勢が素晴らしく、改めて訪れて、ヒレカツの香りの高さに打ちのめされた。「特肩ロースかつ」もすばらしい。
そしてなにより、「毎日が勉強です。同じ部位、あるいは隣同士の肉でも、揚げ具合のベストが違う。それをいかに見切り、感じ取り、ベストに持っていくか。毎日試練をいただいております」という言葉に打たれた。。こういう職人が新たに生まれたことが、何より嬉しかった。
とんかつはもはやブームとなっていて、年々新しい店が増え、新たなブランド豚も増えている。しかしどんな肉や衣を使おうとも、とんかつの基本は「揚げる」という調理である。この一番大切な部分が、ややおざなりになっている店が多いように思う。そんな中で「ふる味」の職人の言葉は、重い。
最後に今年取り上げた店の中からもう一軒あげるなら、殿堂入りの20点はつかなかったが、東高円寺「とんき」をあげたい。古く目黒「とんき」から暖簾分けされた店で、ご主人は恐らく70を超えられている。
大勢の職人やサービスを雇う目黒「とんき」と違って、ご夫婦二人で営まれているが、「はいっ! いらっしゃいませ」。「はいっ。ロースカツ定食ひとつ!」。「毎度よろしくどうぞ。ありがとうございましたぁ!」と、一人一人に、快活でハリのある声で応対されていて、実に小気味いい。この辺りは本店と変わらぬ接客の精神を受け継いでいて、なんとも居心地がいい。
塩が似合うとんかつではなく、ソースが似合うとんかつであり、一切れずつかつにソースをかけてご飯を掻き込む、昭和の食べ方が正しいとんかつである。この地に移って17年、高円寺駅前時代、目黒修行時代を合わせると、おそらく職人としては、半世紀トンカツを揚げられていることだと思う。しかも365日休みなしで昼夜営業されている。
平成も終わろうといている世の中で、いつまでも頑張っていただきたいと、切に願う愛すべきとんかつ屋であった。